当時の長野高校はやるべきことをきちんとやる真面目な子が多かったように思う。
そんな中で異彩を放っていたのがSくん。
彼は実年齢でいくと1つ上なのだが1年間の留学から帰ってきて同学年となった。
そして生徒会にてSくんが生徒会長、私が副会長となり色々と一緒に仕事をしていくことになったのだが、まぁ有能。
勉強は今一つだったSくん(数学の追試常連)だが非常に弁が立ち、また、人から話を引き出すのにも長けていた。
今でも当時の彼以上にトークスキルのある人は滅多に見ない。
トークだけではない。
ライティングスキルも相当で、私の両親も彼の書いた文章を読んで「今度この子うちに連れておいで‼」と言い出す始末。
力の抜けた文章で、でも言いたいことははっきりと伝わってくる。
あがり症でトークが下手、文章には何か変な力が入ってしまう私はずいぶん羨んだものだった。
そして
彼は日本人ではなかった。
韓国人の両親のもと韓国に生まれ小3だか小4だかの頃に日本にやってきたらしい。
それを聞いた時の衝撃は今でも覚えている。
こっちの生まれじゃないんだと。
あまりに完璧、というか私達と何一つ変わらない日本語を操るものだからてっきり日本生まれ日本育ちだとばかり思っていた。
「小さい子に交じって○文で一生懸命勉強したよ~。その時がんばり過ぎて今は全然やる気にならん」
と何でもないふうに言っていたけれど。
そして彼はさらっと、対策らしい対策をしないまま、当時のAO入試で早稲田の政経学部に進学していった。
「俺の為にあるような試験だわこれ」とはSくんの当時の言葉。
今は日本有数の商社でばりばりやっているとのこと。
以来、ずっと彼のことは頭の片隅にある。
「敵わない」と心から思ったただ一人の人として。
~今日の一曲~
「ふしぎなきみのこと もう少し知りたかったよ」
サバシスター「ふしぎなきみ」