以前、中学時代のクラスについて書いたことがあるが、非常に仲が良く現在も年に1回は集まっている。
ただし、どこのクラスもそうであるように、非常に個性の強い面子でもあった。
中でも一番はS平。
当時はヤンキー全盛期の最後の方の時代、仲が良くて平和な我々3年2組に在籍していたから良かったものの、○組とか△組とかだったら間違いなく超ド級の不良になっていたよね、という逸材である。
まぁ平和な2組にいても先生に反抗したり窓を割ったりはしていたのだけれど。
ということでヤンチャ気質な子のご多分に漏れず勉強が苦手なS平だったが、注目すべきポイントが2つ。
1つは私と席が近くになった時に
「連立方程式を教えてくれ」
と言ってきたのだ。
端的に言って、びっくりした。
え⁉
である。
急にどうした、S平。
戸惑いながらも連立方程式を教えていると、これまたびっくりしたことに見る見るできるようになっていくのであった。
後日、参観日にうちの母がS平のお母さんに「勉強教えてもらってありがとうございます。塾でも褒められたみたいで」と言われたらしい。
え⁉塾に行ってたの⁉
と三度驚いたものの、私も無性に嬉しくその経験が教育関係の進路を選ばせたと言っても過言ではない。
もう1つは何がきっかけだったか忘れてしまったが、私の勧めで
本を読み始めたこと
である。
S平は基本的にはもう見た目からして読書を嗜む人間ではない。
何を勧めたものか悩んだが「ぼくらの七日間戦争」を与えた所、これが見事にハマり、シリーズを全て読破してしまった。
ちなみに影響を受けすぎて「俺たちも立てこもろうぜ」と言い出したのでそれは冷静に止めた。
さて、個人的な関わりの中ではこの2つの印象的なエピソードを残して卒業となったのだが、S平は家の都合で北海道の高校に進学することになった。
そして5月、
S平は高校を辞めた。
在籍期間、一か月、である。
あまりにもS平らしくてちょっと笑った後、少し心配になった。
2組でなければ超ド級の不良になっていただろうと皆が口を揃えて言うS平。
同じ頃に連絡が来ていたもののこちらも忙しくそっけない返事で済ませてしまったことも後悔のタネだった。
以降、クラスメイトで集まる度
「京都にいるらしいよ」
「今、沖縄にいるって」
などなど様々なうわさが立ったのだが、数年して長野に凱旋してきた時、
S平は社長になっていた。
人の道を踏み外さず、誰よりも立派になっていた。
人間力という言葉があるなら誰よりもその力を持っている。
失敗したりもしたらしいが今は何十億だかいう金額を動かし、休みになれば青森で巨大マグロを釣っている。
こういう同級生がいるから、勉強が苦手な生徒を目にしても全然大丈夫だと心から言える。
誰しもがS平みたいな進路を辿れる訳ではないのは分かっているが、大事なことは勉強以外の所だと彼が教えてくれたからだ。
億を動かす会社を経営していても、S平は2組の同級会にはほぼ皆勤である。
そういうところだ。
