思い出の京都大学教育学部学部祭③


承前

さてさて、「俺らの代の学部祭」だが、ただ「開催しまーす」では今まで通りになってしまうことは自明。

そこで内部向けには壁一面にポスターを貼ってみたり、居酒屋の試食会をしてみたり、広ーいBARを貸し切って決起集会だといって皆でわいわいしたり、学年の垣根を超えた帰属意識を高めることに腐心していた。

SNSもない時代だったので外部向けにはあまりこれといった手を打っていなかったような気もするが、上述のポスターが後輩の手によって素晴らしくセンスのあるものに仕上がっていたので人目は引いたと思う。

そんなこんなで「百花繚乱」というテーマの下に幕を開けた学部祭、我がフード班(居酒屋の料理担当)は総勢15名ほどの部署だったが初日は予想通りのトラブル続出。

まず、異様に米が固いというお客様からの指摘。

確かに固い。食べられたものじゃない。

なんと米担当の子がすりきり1カップを1合だと思っていたため、10合炊きの釜で11合以上炊いてしまったという事実が判明。

そうだよね、実家暮らしだし京大入試に1合は何g?とか出ないしね。

……

アホかーーー‼

と思いはしたもののお客様には丁重に詫びを入れ、失敗した米は後程雑炊にして賄いに出して事なきを得る。

他にも豚キムチ炒めやたら煙出る問題やレンタルした大鍋の底に2mm程度の穴があいてた問題等、思い返せば学園祭にふさわしい可愛らしいトラブルがたくさん。

居酒屋の営業時間帯はキッチンにこもりきりだったけれど昼間の仕込みの切れ間に外に出てみると、学部の玄関前に設営したステージにはお客さんがたくさん。

どこからかゲストを呼んできたりオークションをやったり。

卒業して思い返せば青臭さは否めないものの、なんとかそれらしいものを作ろうと皆で一生懸命だったなーと思う。

塾は勉強を教えるところ、ではあるけれど、生徒達には

なんでもいいから何かやりな

何にもないなら勉強しな

と伝えたい。できれば人と一緒にするなにか。

将来どうこうじゃなくて、単純に楽しいから。

スマホを通したやり取りじゃなくて、時には面と向かって喧嘩しながらみんなでなにかを創り上げるって多分人生で最高のことのひとつだから。

自分で心開いていけばきっとこれから楽しいことしか待っていない、そんな生徒達が羨ましくもあるのです。

余談

学部祭が終わった翌日、当然片付けが待っているのだが、予定時刻通り集合したのはわずか数名。

夜が明けるまで学部で騒いでいたのだからむべなるかな。

その内の1人から

「みんな早く片付けに来てください‼

これでは百花繚乱ではなく乱乱乱乱です‼」

というメールが届いて目が覚めた、翌日の午後。


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